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過狩り狩り―吾峠呼世晴短編集/吾峠呼世晴


『鬼滅の刃』 の空前のヒットとそれに群がる数多のコラボ企業の有象無象に片足を突っ込みながら、果たしてこれらの事象はたった一人の漫画家の力だけでできたものだろうかと思っていたとき、『鬼滅の刃』 のひな形となった作品があったことを知って、それが読めるという吾峠呼世晴氏の短編集を買ってみました。



というわけで、吾峠呼世晴短編集でございます。ええ、そのまんまですとも。

ひな形となったのは、『過狩り狩り(かがりがり)』 という読み切り作品。なんでも、当の作者はこれを世に出すのを諦めかけていたところを家族に背中を押されて 「第70回JUMPトレジャー新人漫画賞(2013年)」 に応募したところ、佳作を受賞し翌年の 「少年ジャンプNEXT!!」 にて漫画家デビューを果たしたそうで、その後はスランプに陥るものの当時の担当編集者だった片山達彦氏の助言によりデビューの原点となった 『過狩り狩り』 へと立ち返ることになり 『鬼滅の刃』 が生まれ、現在に至ると。(Wiki 調べ)




言われてみれば、当時から受け継がれているアイディアが散見されていて、粗削りだけれど面白いです。それと、あとがきに書かれているような 「担当さんについていただく前で、第三者からのアドバイス等もなく描いているので、何度か読み返さなければわからなかったりする」(原文ママ)という部分は、デビュー作品の段階ですでにその状態だった弐瓶勉の 『BLAME!』 を履修していればどうということはありません(ぉ

もともとは 「着物を着た吸血鬼=和風ドラキュラ」 を明治・大正年代を舞台に描きたかったのがスタートだったというのはややあっけなかったかなとは思いますが。




『鬼滅』 を読み終わったからこそグッとくるのが、2013年当時の作品ですでに珠世さんと兪史郎がそのまんまの姿と関係性で登場する場面。この作品では二人とも鬼ではなく吸血鬼でしたが、主役なのかどうかもあいまいな隻腕(で盲目?)の剣士が振る刀身に刻まれる文字が”悪鬼滅殺”だったりとか、その彼が腕(と視力?)を失ったシチュエーションがどことなく錆兎を思わせたりとか、今だからこそ楽しめるエッセンスにあふれていますねえ。

そんな作者に担当編集としてついたうちのひとり、片山達彦氏のインタビューもまた今読むと味わい深いです。

『鬼滅の刃』大ブレイクの陰にあった、絶え間ない努力――初代担当編集が明かす誕生秘話 - livedoor NEWS
インタビュー中盤に出てくる”連載会議用カット①”の炭治郎と禰豆子のイラストなんか鳥肌立ちますぞ!


あと、これらのやり取りを読みながらふと思い出したのは、あの鳥山明ですらボツ原稿を出しまくりながら 『Dr.スランプ』 にたどり着いた話―当初アラレちゃんは主役ではなく千兵衛が主役だった、というエピソード。何かが生まれるって瞬間はきっとひとりでは無理なんだと思いました。

『ジャンプ』伝説の編集長は『ドラゴンボール』をいかにして生み出したのか - IT Media ビジネスオンライン


ついでに、『Dr.スランプ』 でさんざんイジられていた鳥嶋氏が実は本当にすごい人だったことが分かった記事も紹介しておきます。80年代に目をキラキラとさせながらTVゲームで遊んでいたおれらにはたまらない内容かと思います。

伝説の漫画編集者マシリトハゲーム業界でも偉人だった!鳥嶋和彦が語る「DQ」「FF」「クロノ・トリガー」誕生秘話 - 電ファミニコゲーマー


来年になってもこの 『鬼滅』ブームが続くかは分かりませんが、2031年の亥年にまた盛り上がったら楽しいかもな。そのころは次男も成人を迎えるころか、長男は結婚してたりするのかな。それかワンチャンおれに孫ができてたりするのだろうか。そしたらきっと、その子に100均で売ってる玩具の刀で日輪刀を作ってやるんだ←

『鬼滅』 が鬼の打倒のために幾世代へと技を紡いでいったように、『鬼滅』そのものも親から子へと紡がれるコンテンツでありますように。


追記:

―作者の吾峠呼世晴氏が連載終了後にスッと姿を消したあとも、世の中にはいろんな 『鬼滅』 グッズが溢れかえりました。おれも自分の観測範囲内でどこまでその魔の手(言葉が悪い)が伸びるか傍観していたのですが、カップラーメンはまあいいとして玩具界隈ではアクアビーズ(超懐かしい)がまさかの品切れ中という話も耳にしました。今や街中のいたるところで目にする炭治郎や禰豆子たちといった人気キャラクターは、ufotable制作のアニメ版に準拠したデザインに全集中しているように感じます。そうした状況を吾峠呼世晴氏ははたしてどんな目で見ているのかちょっと気になりますね。自分が作り出したものがその手を離れて個人ではコントロールの利かない規模にまで大きくなるなんて、とても経験のできることではないよなと思いました。

世界を虜にしたアニメ『鬼滅の刃』はどう作られたのか ufotableにしかできない作画とCGの融合 前編 後編 - AREA JAPAN

『鬼滅の刃』ブームの裏に、アニメ化と計算尽くしのファン獲得策 - 日経クロストレンド




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