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PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話/ローレンス・レビー


スティーブ・ジョブズという名前の人を知ったのは、1990年代のはじめのころだっただろうか。当時購読していたサブカル系の雑誌の広告かなにかに、自身が携わった製品とともに得意げに笑みを浮かべた写真が載っていたと思う。あれはたぶん、NeXT系のマシンだったと思うがイマイチ自信がない。ともかく、まだ若々しく野心に満ち溢れていたころのジョブズだ。

そのときすでに、ILMから独立したコンピュータ・アニメーション部門をジョージ・ルーカスから買収し、独立した会社として立ち上げたジョブズは、現在もなお改良が続けられるCG映像制作ツールの 「RenderMan」 を擁しながら、医療研究向けの画像処理分野へと手を伸ばそうとしていたが結果が出ず、ある人物を財務責任者として招聘することになる。



その人物こそが、本著の著者である ローレンス・レビーであり、その会社とは 「トイ・ストーリー」 シリーズでアニメーションによる映像表現のレベルを何段階も押し上げたあの 『ピクサー』 なのだ。本著ではその 『ピクサー』 の裏側、とくにお金にまつわる話とともに、「RenderMan」 開発者のひとりであり、ピクサーの社長だったエドウィン・キャットマルやジョブズの横顔を垣間見ることができるところが面白い。

帯には「アップルを追放されたジョブズともに歩んだ道のり」 と言ったありきたりな引き寄せがあるものの、あくまでも財務担当から見た映像制作会社の勃興とジョブズを含めそれにかかわる人々へ向けられた視点が中心なので、小規模な会社の株式上場にまつわるエピソードだけを切り取ればビジネス書と言えなくもないが、「トイ・ストーリー」 の公開を目前にして上場すべきか意見が分かれたジョブズとレビーとのやり取りなど、当事者だからこそ語られる生々しい空気が何とも不思議な読みごたえ。

それなのになぜこの本を手に取ったかというと、本著のプロローグがすべてだった―。ピクサーは2006年にディズニーに買収されることになるわけだが、おれはこれまで 「ディズニーが金に物を言わせて強引に買収した」 ものとばかり思っていた。しかし、本屋でさわりだけ確認しておこうと数ページめくって飛び込んできたのは、「これ以上ピクサーが大きくなりすぎると、少しの失敗も許されなく」 なることを危惧し、逆にピクサーをピクサーの文化をいちばんよく理解しているはずのディズニーに託したのだ。

『トイ・ストーリー』 や 『ファインディング・ニモ』、『バグズ・ライフ』 のDVDを子供たちとディスクに穴が開くほど見てきたおれとしては、あのとき感嘆しながら観ていたあの映像表現の裏に、こんなエピソードがあったのかと楽しみながら読み進めることができ、2,000円近くする分厚い本だけれど、手にすることができて良かったと思っている。

ジョブズ関連本ではとかくその人格ばかり語られて、彼が実際に細かな部分で何をなしたかを知るには痒いところに手が届かないものが多いが、本著はジョブズに近かった人物から語られるジョブズとの歩みを知ることができるので、オススメです。


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過狩り狩り―吾峠呼世晴短編集/吾峠呼世晴


『鬼滅の刃』 の空前のヒットとそれに群がる数多のコラボ企業の有象無象に片足を突っ込みながら、果たしてこれらの事象はたった一人の漫画家の力だけでできたものだろうかと思っていたとき、『鬼滅の刃』 のひな形となった作品があったことを知って、それが読めるという吾峠呼世晴氏の短編集を買ってみました。



というわけで、吾峠呼世晴短編集でございます。ええ、そのまんまですとも。

ひな形となったのは、『過狩り狩り(かがりがり)』 という読み切り作品。なんでも、当の作者はこれを世に出すのを諦めかけていたところを家族に背中を押されて 「第70回JUMPトレジャー新人漫画賞(2013年)」 に応募したところ、佳作を受賞し翌年の 「少年ジャンプNEXT!!」 にて漫画家デビューを果たしたそうで、その後はスランプに陥るものの当時の担当編集者だった片山達彦氏の助言によりデビューの原点となった 『過狩り狩り』 へと立ち返ることになり 『鬼滅の刃』 が生まれ、現在に至ると。(Wiki 調べ)




言われてみれば、当時から受け継がれているアイディアが散見されていて、粗削りだけれど面白いです。それと、あとがきに書かれているような 「担当さんについていただく前で、第三者からのアドバイス等もなく描いているので、何度か読み返さなければわからなかったりする」(原文ママ)という部分は、デビュー作品の段階ですでにその状態だった弐瓶勉の 『BLAME!』 を履修していればどうということはありません(ぉ

もともとは 「着物を着た吸血鬼=和風ドラキュラ」 を明治・大正年代を舞台に描きたかったのがスタートだったというのはややあっけなかったかなとは思いますが。




『鬼滅』 を読み終わったからこそグッとくるのが、2013年当時の作品ですでに珠世さんと兪史郎がそのまんまの姿と関係性で登場する場面。この作品では二人とも鬼ではなく吸血鬼でしたが、主役なのかどうかもあいまいな隻腕(で盲目?)の剣士が振る刀身に刻まれる文字が”悪鬼滅殺”だったりとか、その彼が腕(と視力?)を失ったシチュエーションがどことなく錆兎を思わせたりとか、今だからこそ楽しめるエッセンスにあふれていますねえ。

そんな作者に担当編集としてついたうちのひとり、片山達彦氏のインタビューもまた今読むと味わい深いです。

『鬼滅の刃』大ブレイクの陰にあった、絶え間ない努力――初代担当編集が明かす誕生秘話 - livedoor NEWS
インタビュー中盤に出てくる”連載会議用カット①”の炭治郎と禰豆子のイラストなんか鳥肌立ちますぞ!


あと、これらのやり取りを読みながらふと思い出したのは、あの鳥山明ですらボツ原稿を出しまくりながら 『Dr.スランプ』 にたどり着いた話―当初アラレちゃんは主役ではなく千兵衛が主役だった、というエピソード。何かが生まれるって瞬間はきっとひとりでは無理なんだと思いました。

『ジャンプ』伝説の編集長は『ドラゴンボール』をいかにして生み出したのか - IT Media ビジネスオンライン


ついでに、『Dr.スランプ』 でさんざんイジられていた鳥嶋氏が実は本当にすごい人だったことが分かった記事も紹介しておきます。80年代に目をキラキラとさせながらTVゲームで遊んでいたおれらにはたまらない内容かと思います。

伝説の漫画編集者マシリトハゲーム業界でも偉人だった!鳥嶋和彦が語る「DQ」「FF」「クロノ・トリガー」誕生秘話 - 電ファミニコゲーマー


来年になってもこの 『鬼滅』ブームが続くかは分かりませんが、2031年の亥年にまた盛り上がったら楽しいかもな。そのころは次男も成人を迎えるころか、長男は結婚してたりするのかな。それかワンチャンおれに孫ができてたりするのだろうか。そしたらきっと、その子に100均で売ってる玩具の刀で日輪刀を作ってやるんだ←

『鬼滅』 が鬼の打倒のために幾世代へと技を紡いでいったように、『鬼滅』そのものも親から子へと紡がれるコンテンツでありますように。


追記:

―作者の吾峠呼世晴氏が連載終了後にスッと姿を消したあとも、世の中にはいろんな 『鬼滅』 グッズが溢れかえりました。おれも自分の観測範囲内でどこまでその魔の手(言葉が悪い)が伸びるか傍観していたのですが、カップラーメンはまあいいとして玩具界隈ではアクアビーズ(超懐かしい)がまさかの品切れ中という話も耳にしました。今や街中のいたるところで目にする炭治郎や禰豆子たちといった人気キャラクターは、ufotable制作のアニメ版に準拠したデザインに全集中しているように感じます。そうした状況を吾峠呼世晴氏ははたしてどんな目で見ているのかちょっと気になりますね。自分が作り出したものがその手を離れて個人ではコントロールの利かない規模にまで大きくなるなんて、とても経験のできることではないよなと思いました。

世界を虜にしたアニメ『鬼滅の刃』はどう作られたのか ufotableにしかできない作画とCGの融合 前編 後編 - AREA JAPAN

『鬼滅の刃』ブームの裏に、アニメ化と計算尽くしのファン獲得策 - 日経クロストレンド




鬼滅の刃 23巻(紙)/吾峠呼世晴


よもやよもやである。

吾峠呼世晴氏の 『鬼滅の刃』 の単行本最終巻がついに発売されたのだ。 単行本の発売ということは連載はすでに終わっているので、ラストがどんなだったかを知る人も多いだろう。それが不思議とネタバレに触れることはなかったのはきっと大多数の読者の人の善意だと思っている。―今や知りたくないことまでいやでも目にしてしまう世の中なのに。

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というわけで、22巻目までは電子書籍で買っていたものの、家族と泊まった無限列車SLホテルで読むにはスマートフォンの画面ではいささか読みづらかったので、最終巻だけは紙の本で読もうと決めていたのだ。どうせ、子供たちも読みたがるだろうし。それにしても、滑川市の東福寺野にあるこの公園が話題にならないのが不思議でならない。いや、せっかくだから”鬼滅”フィーバーは富山駅北に出来るという新しい公園に置かれるSLに任せて、ここはこのままであってほしいと願うのはわがままだろうか。

さておき、『鬼滅の刃』 の英語翻訳版が 『Demon Slayer』 というのは、いかにもらしいというか日本語の表現力の巧みさをかえって再認識させてくれた。意味としてはけっして間違いではないのだけれども、そんなタイトルの創作物ならいくらでもあったろうと思わざるを得ない。やっぱり、『鬼滅』 は ”きめつ” であってこそだと思う。

22巻目の発売から時間が経っているので、あえてここで触れることにするが、禰豆子がはっきりと意識を取り戻した場面を読んで、「ああ、これで炭治郎が死ぬなんてことがあったら切ないなあ」 「いや、それで物語に深みが増すならそれもありかも」 とか想像していたのだが、納得のラストで締めくくられて本当に良い意味できれいに終わってホッとした。なんなら、うっすら目から変な汁が出そうになったくらいだ。過大評価なのは認めよう、手垢のついた部分などいくらでもある。それでも人を惹き付けるにはじゅうぶんな作品だ。

今を思えば、禰豆子のコスプレをしたどこの誰だか分からない人の画像を Twitter で見かけたのが最初だった。はじめこそ 「銀魂」 や 「BLEACH」 の亜流と思い込んでいたものだ。それがよもや子供たちが学校に着けていくマスクの柄になるほどに認知されていくとは想像もつかなかったが、禰豆子の口がふさがれているのとは意味は違うが、顔の半分を覆われて生活しないといけないことへの不安を少しは緩和してくれたと信じているので、あの設定は今の世の中にあって偶然だが絶妙だと感じている。

そう、誰かの姿を自分に投影してみたり、本当の自分ではない別の人格を演じることで人は正気を保てることだってあるのだ。



表紙の写真を撮りたかったが、家族じゅうで順番を取り合って読んでいるので暇がなかった。劇場版は早ければ明後日観に行くはず。


スティーブ・ジョブズは何を遺したのか/日経BP社(監修:林信行)


ふとしたきっかけでこの本の存在を知り、発行からおよそ9年の時を経て手元に届きました。もちろん中古です(購入価格は言えません)。



2011年11月5日、”稀代のイノベーター” スティーブ・ジョブズはその56年の生涯を閉じました。本誌はその功績をまとめたもので、かつ発行が2012年1月=亡くなってからすぐということで、死後に周辺の人物たちによって彼の発した言葉が神格化される前だったことが購入のきっかけです。

もともと人生の大半を Windows マシンとともに過ごし、Mac はちらっと横目で見ていた程度だったおれにとって、スティーブ・ジョブズという人を知るにあたって感じたかったのはあくまでも ”当時の熱量”にほかなりませんでしたし、いちばん興味があることとすれば、”彼の愛したデザイン”に触れることでした。

友人たちの所有物の中から不要になった Macbook を譲ってもらい、これまで触れたとのない自分にとっては未知の OS の振る舞いを確かめたりしながら、不運にも自分が立ち入らなかった世界線に思いを馳せるのを懐古趣味だと言われればそれまでですが、よくできたプロダクトというものは何年経っても色あせないものだと思いますし、時間の感覚を失わせる不思議な力を持つものだと信じています。

実はMachintosh SE/30 も家にあったりするのですが、発売はジョブズがアップルを去ったあと。しかしながら、ジョブズが好んだというフロッグデザインを踏襲していることが入手の動機です。本当は NeXTcube が欲しいんだけれども。

ジャケ買いならぬ表紙買いですが、iPhone写真家であり、SIGMA のイベントでもお世話になった三井公一先生が撮影者と聞いたら、手を出さずにはいられないでしょう。



送料のほうが高かったです。


沖縄やんばるフィールド図鑑/湊 和雄


ヒトの体温を超えるような日中の暑さでは、昆虫たちも元気がなくなるようで、目立つところでは蝉の鳴声もずいぶんおとなしくなりましたし、そういえば蚊ですよ、蚊。雨が降らない日が続くと卵を産み付ける場所が少なくなって繁殖できないんですって。それって良いのか悪いのか分かりませんが、言いたかったのはこんな暑さでは蝶も羽ばたきを止められずにいるってこと。

あらためて昆虫の生態に興味を持つのはなかなか楽しいもので、蝶の薄い羽はれっきとした器官で、放熱の役割を果たしているということを何かの本で読みました。なので、暑さがやわらぐまで昆虫撮影はお休みすることにしつつ、以前から気になっていた図鑑を買うことにしました。だって、暗い森の中で蝶の羽ばたきが止まったような写真を撮るなんて、おれとおれのカメラでは無理なんだもん。

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沖縄在住の写真家、湊 和雄氏による写真と文で構成された 『沖縄やんばるフィールド図鑑』 でございます。

2012年8月1日発行のもので、版元にはもう在庫はなく、Amazon に出店している 「ECJOY!ブックス」 という通販会社から新品という認識で購入。こんなご時勢ですし、印税とかで貢献できたら幸いだとは思うのですが、書店で手に取って買ったわけではないので若干のモヤモヤが残るという、おれってきっと古いタイプの人間なんだろうなと思います。


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”やんばる” とは 「山原」 という意味だそうで、主に沖縄本島北部に広がる山野のことを差すそうです。位置でいうと恩納村から名護市にかけてより北に位置する地域ということですが、在住者の年代によって認識が変わるという(苦笑。まあ、細かいことは気にしない。


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この 『沖縄やんばるフィールド図鑑』 では、昆虫だけにとどまらず動植物全般にわたって紹介されており、文字通り ”足で撮った” と思わずにはいられません。本一冊書くのに百冊は資料を読まないと的な話を聞いたりもしますが、こういう図鑑というものは自然の生態が資料なわけで、それから得た情報をまとめるとなると知識以上に予備知識が必要でしょうし、加えて写真を撮る技術も要求されることも想像できるとなると、もう何も言えないです(苦笑。

トム・ハンクスが片手袋の写真を撮り歩くのとは分けがちがうんですよ!


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沖縄はおろか本州から出たことはない(強いて言えば能登島くらい)し、亜熱帯気候のやんばるの生態とうちの近所とはまったく違うため、手にするまでだいぶ迷いましたが、子供の夏休み中に行った 「昆虫王国立山」 で見たヘラクレスオオカブトの紹介文にあった、「亜種が多過ぎてこれ以上研究するのは無理」 という意味の内容が印象深かったため、こりゃもう昆虫(または動植物)相手に細かいことなんか気にしてらんないよな、カラスアゲハの亜種が沖縄にもいるというのがなんだか面白いじゃないかと思えるようになってきました。

何かを学ぶのに年齢は関係はないとはよく言われますが、あと30年くらい生きるとしても、ひょっとして10年しか生きられなかったとしても、興味を持ったものに対してブレーキは踏んじゃいけないんだなと思いました。


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