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鳩を葬る


朝、子供を登校班の集合場所まで見送る時間になっても起きられないでいたころ、家内が誰かと電話で話している声で目が覚めた。鳥の死骸が―という言葉を聞いて、ああ、この前と同じように雀でも死んでいたんだろう。あのときもおれが片付けに行ったんだ。4階建ての集合住宅の階段の窓ガラスにときおり鳥がぶつかって落ちていることがある。手で触れたくないから新聞紙を厚く重ねた上に乗せて、ゴミステーションの脇の木の下に埋めた。

しかし、今回はどうやら違うらしい。鳩だ。それも、地べたではなくエントランスの庇の縁で死んでいて、下から見上げると尾と脚だけが見えて生々しい。上階の住人が管理会社に処理を頼んでみると息巻いているらしく、きっとやる気のない会社だからどうせこちらで処理をという話になるだろうけれど、適当な時間になったらまたあのときのように片付ければいいさ。そう考えながらコーヒーをすすった。

火曜日は可燃ごみの収集に来る日で、それを知ってか知らずかカラスが自然と集まってくる。ほらもう鳴き声が聞こえてきた、やつらが鳩の死骸に気付くまでどのくらいかかるだろう。仕事にでかけた家内からは何の連絡もない。乱雑に啄まれ、羽も散り散りになったのを片付けるくらいなら、と既読にならないLINEを無視して行動に移ることにした。いわゆる未読スルーである。

2階の窓から脚立を使って庇の上に乗り、この日捨てるつもりだった24本入りの缶ビールの段ボールケースに鳩を園芸用のシャベルで押し込んだ。あっけないほど軽かった。もう少しずっしりしているだろうと思って準備万端で臨んだのに、これなら新聞紙でも良かったんじゃないかと考えながら、ビールの箱に入った鳩を団地の裏の神社まで運んだ。

庇にうっすら残った赤い血はそのままにしておいた。きっと午後からの雨が洗い流してくれるだろう。

首の折れた鳩の死骸を、神社の境内の奥にある松の木の下に埋めることにした。かがんでシャベルを地面に突き立ててみると、落ちた松の葉の集まりがまるで茶色い蛆のようにみえて寒気がした。土は堅く、小さな園芸用のシャベルでは深く掘れなかったので周囲の土と落ち葉をかぶせて盛り土のようにした。雑な埋葬だが、かえって野良猫にでも見つかって食われたほうが手っ取り早いだろう。とにかく人の目にさえ触れなければいいのだ。

立ち上がって半歩下がったときにつまずきそうになった石を不格好な盛り土の上に乗せ、短い間手を合わせた。仕事が終わったと家内に報告すると、今度はもう少し大きめのシャベルを買っておくと言ってきた。おれに次はいったい何を片付けさせる気なんだろうと思った。



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