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笑い話にもならない左脚のおぼえがき


―プロローグ

いつまでも心は14歳のつもりでいても、40歳を過ぎて毎日欠かさずビール呑んでりゃ腹も出る、というのは納得ずくだったわけだが、9月に入って急に 「あれ、こんなに腹出ていたっけ?」 と感じるようになった。それと前後して嫁が毎朝出してくれる牛乳を多めに入れたミルクコーヒーが合わないのか、夏バテなのかお腹の調子もずっと悪く、寝つきは良いが、必ず2時か4時には一度目が覚めてしまうようになった。

そんな日々を過ごしながら、たまたま他部署に仕事の手伝いに行き、久しぶりに会った同僚に 「一緒に働いていたころは全然細かったのに」 と言われ、 「いや、なんか他に原因があるような・・・」 と歯切れの悪い返事をしてしまったのを 、「やっぱ、ビールのせいっすか?」 と腹鼓をひとつ打ちながら笑いに変えた日から一週間後、左ひざに異変を覚えたのだった。


【一日目】
朝、仕事に行く前に左ひざに差すような痛みを感じる箇所があることに気づく。虫刺されかと思い、軟膏を塗って絆創膏を貼った。患部は徐々に熱を持ち始め、夕方から湿布を貼り始めた。

【二日目】
患部周辺の腫れと熱がひどくなり、終業時間近くにもなると足が重たくて歩けない。痛みは膝を曲げるときに感じる程度。何より患部が熱いのが不気味で、とりあえず連休明けの仕事休みに病院に行くことにした。

【三日目】
前日の状態より変化なし。湿布を交換しながら一日を乗り切ったが、帰宅後に悪寒と激しい震えを感じた。発熱はあったような感じだが、測る余裕がなかった。

【四日目】
その日は仕事だったが、寝込んでいる間に嫁が調べておいてくれた整形外科に行くことにした。尿検査、採血、レントゲン撮影とひととおり行い、言われた言葉が 「肝臓の数値が高いので内科に行け」 だった。痛風なの、ねえ痛風なの?
とりあえず抗生物質と痛み止めを処方される。痛みの原因と、前日の発熱に関しては何の見解も示されないまま。

【五日目】
部分的な腫れだったのが、膝から下から足首までの浮腫みへと変わった。仕事は休みだったが、内科には行かず整形で処方され薬を服用しつつ冷凍庫にあった保冷材でアイシングしつつ一日中横になっていた。読書が捗る。ふと思い立って左脚の脛毛を剃った。比較しやすいように右脚も同じように剃ると、面白いくらいに左脚が大きく見えた。

【六日目】
浮腫みと痛みを感じながらも、気晴らしに海を見に行った。この日が海を最後に見た日になっても後悔しないくらいに綺麗だった。このとき撮った写真をSNSで公開したら、SIGMAの山木社長に”いいね”をもらった。夕方、これで最後になるかもしれないと思い子供と公園に行った。おれは動けないが、次男は周囲の子たちの中心になって飛び跳ねている。日がすっかり短くなり、先週の同じじかんはまだ太陽が高い所にあったはずなのに、この日はもう影を帯びていた。

【七日目】
前日の罪滅ぼしに内科に行くことにした。看護師に事情を説明し、あらためて採血をしてもらい、内科の医師に診てもらうも患部に一瞥をくれるだけで触れもせず、血液検査の結果の数値だけで長々と説明を聞かされる。肝臓の数値は高いままだが、寝込んだ日から数えて5日間は酒を呑んでおらず、炎症を示す数値が上がっていることから感染症の疑いはないかと尋ねてみても、のらりくらりとはぐらかされるだけだった。

腹が立ったのと減ったのとでよく分からなくなったので、マクドナルドでセットを買い、勤務先の途中になる実家に立ち寄ってテーブルを借りることにした。母親に患部を見せ、今日までの経緯を愚痴っぽく話す。若いころからテニスのインストラクターをしている母に 「今回は怪我ではないだろうから当てはまらないと思うけれど」 という前置きのあと、足の指先から上に血を押し上げる要領でマッサージをすると、できた浮腫みはいつも取れていたという話を聞かせてもらった。

なるほど、という気持ちとともに不意に ”手当て” という言葉が頭に浮かんだ。”痛いの痛いの飛んでいけ” ではないが、今の時点では最良の治療法に思えてくる。よし、休憩時間や業務の合間に左脚をさすってみよう。患部に触れずして何が治療だ。

【八日目】
仕事中はアイシングができないため湿布を貼って過ごすが、じきに熱で温くなるため効果が期待できなくなる。あきらめて湿布を取り、マッサージと抗生物質と痛み止めの服用だけで過ごす。そもそも、痛み止めを飲まなくても我慢できる程度の痛みだ。親知らずを抜いたときに痛み止めを飲み過ぎたのか、まるで効いた気がしない。浮腫みは相変わらずだがなんとかなるだろう。

【九日目】
八日目と同じ。

【十日目】
マッサージが効いてきたのか浮腫みが治まってきた。患部の赤みはこれまでと変化はなく、表面を触るとヒリヒリする程度。昼間には抗生物質の飲み切った。痛み止めは効果がない(ロキソニンなのに)のでもう飲んでいない。

【十一日目】
起床直後しばらくは脛の浮腫みがひどかったが、次男と散歩しているうちに健康なときの状態に近くなった。膝は相変わらず痛いが腫れはほぼ感じない。熱は少しだけ残っている。このまま治ってくれればいいのだが、立膝ができないので仕事中不便で仕方ない。


―エピローグ

やれやれ、つまるところ整形外科に掛かるでも内科に掛かるでもない宙ぶらりんのこの脚は、一周回って何らかの虫刺されが原因かと言われればそうかもしれないし、違うかもしれない。それだけのことなのだろうが、オチが欲しい性分なのでとても困っている。


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