『Hidden Figures/Right Stuff』


1975年7月15日、アポロ宇宙船が使用された最後のフライトであり、かつて熾烈な宇宙開発競争をした旧ソビエトとの最初の共同飛行となる 『アポロ・ソユーズテスト計画』 を成功させたのは、”マーキュリー・セブン” の宇宙飛行士の中でこれまで唯一宇宙に行っていなかった、ドナルト・スレイトン。マーキュリー計画終了時に39歳だった彼は、このとき51歳になっていた。

同じ年の4月5日、かつてカリフォルニア州のミューロック陸軍飛行場(1950年にエドワーズ空軍基地へ改称)の隣りで 「ハッピー・ボトム・ライディング・クラブ」 という酒場を経営していた一人の女性の死亡が確認された。彼女の名は、フローレンス・ロウ ”パンチョ” バーンズ。米軍航空隊創設者の一人、タデウス・S ・C・ロウを祖父に持つ、米国航空史上初の女性飛行家の死でもあった。

それより遡ること約30年前の1947年、当時24歳でアメリカ空軍のテストパイロットだったチャック・イェーガーがベル X-1 に搭乗し、音速を超えた最初の人類となる。このときの記録はマッハ0.92。

彼のような命知らずの冒険心溢れた飛行機野郎たちのたまり場になっていたのが、「ハッピー・ボトム・ライディング・クラブ」。そこへNASAの前身機関であるNACAから二人のスカウトが訪れる。人類をカプセルに入れ、地球周回軌道に乗せるという計画のためだ。しかし、チャック・イェーガーはこのスカウトにはかからず、1962年にNASAと空軍が設立したパイロット養成学校(USAF Aerospace Research Pilot School)の初代校長に就いた。ちなみにトム・クルーズの 『トップガン』 は海軍パイロットの物語だかんね。

「ハッピー・ボトム・ライディング・クラブ」 は1950年に不審火により焼失している―。小山宙哉の 『宇宙兄弟』 22巻に登場する”OUTPUT TAVERN” はこの店がモデル。店主のパーカーのモデルはケヴィン・スペイシー。今やすっかりスパイシーな立場になっちゃった俳優さんですけれども。


1957年、旧ソビエトが初の人工衛星の発射に成功させ、米国内に混乱が起こった。この ”スプートニク・ショック” の影響で、人類初の有人飛行計画(マーキュリー計画)の発足に火が付いた。続いて1958年に米国が人口衛星エクスプロラー1号の発射に成功。東西冷戦時代の宇宙開発競争の幕開けでもあった。

そのころ、バージニア州ハンプトンにあるNASAのラングレー研究所へと向かう路上で、三人の黒人女性が乗った車が故障で止まってしまう。黒人差別の色濃く残るこの時代に、様々な逆境と闘いながら道を切り拓く三人の名はキャサリン、ドロシー、そしてメアリー。1961年のこと。

米国がアポロ計画にて人類初の月面着陸を成功させる以前、米国初の宇宙有人飛行を成し遂げたマーキュリー計画を描いた映画 、『ライトスタッフ(The Right Stuff/1983)』 と、その成功を多くの黒人女性が支えていたことを初めて知らしめた 『ドリーム(Hidden Figures/2016年)』、ともに物語の始まりはこんなところ。

『ライトスタッフ』 ではマーキュリー計画での出来事をできるだけ詰め込んだのに対し、『ドリーム』 は1961年をじっくりと描くという感じだった。アラン・シェパードが成功させた米国発の宇宙弾道飛行(マーキュリー・レッドストーン3号)と、ガス・グリソムが起こしたマーキュリー・レッドストーン4号カプセルの回収失敗事故、それに伴ってより精度の高い計算(コンピューティング)が必要とされていく・・・といっても着水点の予測ってのが微笑ましいというかなんというか。

そして、どちらの物語もハイライトは1962年2月20日、ジョン・グレンの搭乗するマーキュリー・アトラス6号の米国初の衛星軌道の到達のシーンなのがアツいね。ただ、一つ贅沢を言わせてもらえれば、グレン飛行士役の俳優はあんなスクールカーストの頂点みたいな奴なんかじゃなくって、ちゃんと若ハゲの俳優を選んでもらいたかった。

『ライトスタッフ』 で41歳のグレン飛行士役を演じたエド・ハリスは、当時33歳―。



さておき、現代宇宙開発の草創期を描いた作品ながら、これまで語られることのなかった NASA での女性の黒人女性の活躍を描いた 『ドリーム』 。興味深いのは同じ年に公開され、日本国内でも大きな話題を呼んだ 『ラ・ラ・ランド』(観てないけど)を超えたヒットとなったこと。ポップで明るくてロマンチックな内容の映画(観てないけど)よりも、自称:自由の国アメリカの恥である部分がここまでクローズアップされた作品を受け容れられるいうことは、逆にこの映画を観て励まされる人がまだまだいるということなのだろう、なんて。


1963年8月28日、 マーティン・ルーサー・キング牧師がリンカーン記念堂の前で演説。

I have a dream that one day this nation will rise up and live out the true meaning of its creed: “We hold these truths to be self-evident: that all men are created equal.”

I have a dream that one day on the red hills of Georgia the sons of former slaves and the sons of former slave owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.

I have a dream that one day even the state of Mississippi, a state sweltering with the heat of injustice, sweltering with the heat of oppression, will be transformed into an oasis of freedom and justice.

I have a dream that my four little children will one day live in a nation where they will not be judged by the color of their skin but by the content of their character.

I have a dream today.

I have a dream that one day, down in Alabama, with its vicious racists, with its governor having his lips dripping with the words of interposition and nullification; one day right there in Alabama, little black boys and black girls will be able to join hands with little white boys and white girls as sisters and brothers.

I have a dream today.

I have a dream that one day every valley shall be exalted, every hill and mountain shall be made low, the rough places will be made plain, and the crooked places will be made straight, and the glory of the Lord shall be revealed, and all flesh shall see it together.

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この世界の片隅に


先日、『君の名は。』 の iTunes映画レンタルがとても便利だったので、今度はこうの史代原作の 『この世界の片隅に』 をレンタル視聴しました。自宅の目の前にTSUTAYAがあるんですけど、借りに行くのも返しに行くのもめんどくさく感じる性分なので、このご時勢万事簡便で申し訳ない的な(違

katasumi.jpg

さて、原作漫画のほうはアニメ映画化の話題が出た2年半前に読んでいることもあって、ついつい原作とアニメと比較してしまいそうになるところなんですが、いつの間にか原作のことも、そもそもアニメーションであることすら忘れて見入ってました。

それくらいに人物が生き生きと描かれ、かつ原作の雰囲気そのままに動くという当たり前のことがちゃんとできているのが素晴らしい。原作のアイディアや世界観だけ拝借して、方向性が別モノになっちゃってる作品とか多いからね・・・。そういうのと比べたら、本当に誠実にこのアニメ作品を創り上げたんだと感じました。

それに、主人公の「すず」の声は女優の「のん」。もう、まんま”すず”のイメージ通りの声で、視聴後に漫画を読み返しているときにも、頭の中では「のん」の声で再生されちゃうくらい。奇跡的に素晴らしいキャスティングだったと思いました。
その一方で、すずの義理の姉の黒村径子役の尾身美詞の話し方が日本エレキテル連合っぽく聞こえて、ちょっとだけ集中力が削がれるところがあったけど、この二人の関係性は原作よりもアニメ映画版のほうがより時間を割いて描かれていることもあって、径子に感情移入しやすくなったのは物語に深みが出て良かったと思います。


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原作との比較ついでに、この空襲シーン。漫画ではそれまでのほんわかとした空気からガラリと変わって、かなりの迫力で爆撃機の群れが描かれていますが、映画ではすずが描いた絵のように表現されていました。


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そして、次のシーンでのんの声が言う ”ああ、今ここに絵の具があれば” という独白。すぐさますずは自分は何を考えてしまっているんだろうと否定しますが、すごいものを目にしたときに思わず絵に描きたくなる気持ちがよく分かるので、これらのシーンは個人的にちょっと刺さりましたね・・・。

ちなみにこの台詞は原作にはありません。また、呉の軍港で訓練している海軍の船舶の訓練の様子も、原作ではあまり描かれていないところをきちんと表現することで、たとえ軍港の町だとしてもこれまでは少しのんびりしていた、そんな時代もついに終わったことを感じさせてくれたと思います。



ところで、iPad のこのマルチタスク機能って iOS11 からでしたっけ? 映画と漫画を比較するのにとても便利で良かった、なんて。


君の名は。


感想文を書くために創作物を鑑賞するのがイヤだったので、気が向くまで観ないでおこうと思っていたんですが、ようやく気が向いたので昨年とても話題になった新海誠監督先品 『君の名は。』 を、ほぼ一年遅れで観ました。

ちなみに、 iTunes ビデオのレンタルというやつを初めて利用してみたぞ、と。

Your_Name 1

実は、人格&性別入れ替わりモノというジャンルというかシチュエーションは創作物の中でも特にキライなほうでして、そもそも現実にあり得ないのはもちろんのこと、自分自身の体でさえ操縦するのに常に注意を払っている身としては、そう簡単にいくわけねーだろと思わずにはいられなくて。あと、話題作には乗っかりたくないというへそ曲がりな性分もあって、今に至ります。


Your_Name 2

さて、率直に感じたことを言葉にするとすれば、この作品がヒットしたのが良く分かるというか、ここ数年来のアニメ作品の中では突出した出来なのではと思いました。新海作品といえば嘘みたいに綺麗な背景描写とめんどくさい語り口がちょっと苦手で、個人的には遠巻きに眺めていようと思っていたところなんですが、アニメ作品全部に言える長所―どんなにクサい台詞でも許される、モノローグが嫌味にならない―が生きていて、最後まで休みなく観ることができました。

”聖地巡礼” なんて言葉が流行るほどに現実世界の風景をトレースした背景が多用されているのはどうかとは思ったけれど、これって逆に本当に実写作品として作ろうとすると、見飽きた俳優の顔ばかり揃えられてつまんなくなりそうで、皮肉だけど登場人物のデザインを自由にできるアニメーションの勝利ではなかろうかと。

現実の風景のトレースはまあこれはこれで、うんうん、赤羽橋分かるよー。あの辺だよね、みたいに自分の土地勘とシンクロするのも楽しかったし、この作品を観る前にちょっと飛騨古川駅まで行ってみっぺ?と目論だことがあって、ただ汽車(ディーゼルカー)
の本数が絶望的に少ない高山本線の宿命に阻まれて諦めたことがありました。

それなのに、三葉はどうやって高山本線を使って東京まで行ったんだろうか。きっと名古屋まで出て東海道新幹線に乗ったんだろうけど、「ちょっと東京に行ってくる」なんて飛騨の山奥に住む女子高生が言えるもんじゃなかろうに。まさかの富山からの北陸新幹線をキメちゃってくれたりとか?―このあたりについては、さらにリサーチが必要だな(


Your_Name 3

さておき、フィクションをフィクションとして楽しめるようにリアルさを追及した、愛すべき作品世界でした。突っ込もうと思えばどれだけでも突っ込みどころはあるだろうけど、そういうことで消耗はしたくないよねと思いつつ、BD買おうかなあ、オマケのしおりがおっぱい揉んでるシーンだったら嫌だなあと思って悩み始めています・・・。

ところで、三葉の通う糸守高校の体操服に書かれた”糸高”の文字、部首と旁をくっつけたら”縞”(しま)に見えますよね?縞といえば、作品中に三葉たちが作る組紐(瀧に手渡したやつじゃないほう)の模様がまさに縞模様だったわけですが、もしかしてそういう意図があったりしないかな、なんて思いました。糸だけに―。


シン・ゴジラ/Blu-Ray の発売日が決まったぞ!


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観てないけどびっくりするぐらい世間の評価の高い 『君の名は』、『この世界の片隅に』 を
経たあとだと、どうしても存在が霞んだ感の否めない庵野秀明監督渾身の特撮空想映画、
『シン・ゴジラ』 のソフト化がついに決定、発売は2017年3月22日だよッ!

購入するのは国民の義務として(ぉ、いくつかのバリエーションがあることにいつも混乱する
ので、今のうちにまとめておきますが、結論から言うと、

4KテレビもUHD BD 再生機も持ってなくても黙って
UHD BD 版買っとけ!!


なのである、以上!


■第一形態
DVD 2枚組(本編/特典Disc) 3,800円*

■第二形態
BD 通常版2枚組(本編/特典Disc) 4,800円*

■第三形態
BD 特別版3枚組(本編/特典/スッペシャル特典Disc) 6,800円*

■第四形態
UHD BD/BD 4枚組(4K UHD BD本編/BD本編/特典/スッペシャル特典Disc) 8,800円*

*消費税抜(悪意のある転売ヤーに惑わされないように定価は押さえておかなきゃね!)


個人的には、まず第四形態の UHD BD/BD 版は買うとして、これまでの英才教育が功を
奏してすっかり怪獣&恐竜好きになった次男対策(ディスクの記録面をべったべた触る)の
ために、DVD版も買わなきゃなと思う次第。

いずれにせよ、劇場では一回しか観れていないので、早く自宅で好きなだけ噛みしめたい
ですね。


Black Rain


ちゃんと観たつもりが、実際は大半のストーリーが頭に入っていなかった、リドリー・スコットの
『ブラックレイン』(1989年)を思い出したように視聴。

リアルタイムでは観ていないはずですが、おれの中では『アンタッチャブル』(1987年)の
テレビ放送を観たのち、アンディ・ガルシア(カストロ政権から逃れてきたキューバ系移民の子
という出自-イタリア系かと思ってた)のファンになった流れでこの作品に興味を持った・・・はず。

また、坂本龍一の著書 『SELDOM-ILLEGAL:時には、違法』(これも1989年)の中で、
『戦場のメリークリスマス』のプロデューサーだった友人の紹介で会ったマイケル・ダグラスに
高倉健が演じた松本警部補役として出演を打診されるエピソードを通じて、
なんとなくタイトルだけは頭に入っていたと思う。

それに、監督はあのリドリー・スコット(『ブレード・ランナー』 の後、まだ数本しか撮って
いなかったため、今ほど技量を疑っていなかった)だったし。

そういう流れなので、松田優作の遺作として一般に認識される感覚からは外れてますかね。
むしろ、アンディ・ガルシア演じるチャーリーが殺されるシーンばかりがずっと頭に残ってる。

そんな 『ブラック・レイン』 ですが、あらためて観ると、松本警部補役は高倉健で本当に
良かったと思います。あの坂本龍一だったらというわけではなく、
他のどんな役者でもあの役柄の自然な立ち居振る舞いはできなかったと思う。

健さん、当時すでに58歳ですか。今のどの60前の男より若々しいんじゃない?(苦笑
これまでも何本か高倉健が出ている映画を観た(と言っても 『南極物語』や『ミスター・
ベースボール』くらいだけど)けれど、この作品の演技がいちばん好きだなあ。

あとのは、仏頂面で時々口をモゴモゴさせてる印象しかなくて観る気も起きないし、
今さら任侠映画を遡って観るほど酔狂ではないし(ぉ


さて、映画のストーリーそのものは、よくよく考えたらすごくシンプルなものだという
ことに気付きました。
それを骨子として、肉付けされた脚本には目立った破綻もなく、ドラマとしてもっと評価
されても良いんじゃないかと思うんだけど。

偽ドル札の原版を巡る、親分と元子分の抗争と、アメリカ人の刑事と日本人警官の友情。
バディものとして観ても高倉健の演技が巧いので安心して観られるし、
マイケル・ダグラスには好き嫌いが分かれるとは思うけど、おれはこのくらいクドイ顔の
方が対比としてメリハリが付くので彼のキャスティングはアリだと思ってる。

外国人映像作家の描くおかしな日本感は、当時のスタッフが頑張ってくれたおかげか
さほど変でもなかったし、むしろ外国人でしか切り取ることのできない大阪の風景が
見られてとても面白いと感じました。

驚いたのは、ケイト・キャプショーの出演で、当時はスピルバーグと結婚する前でしたね。
せっかくクラブ・ミヤコのホステス役で出たんだから、『インディー・ジョーンズ/魔宮の伝説』
で演じたウィリーのセルフ・パロディーでもやればよかったのに(笑

マイケル・ダグラス演じるニックのニューヨーク市警での同僚役として、ジョン・スペンサー
(2005年没)の顔がここでも見られて良かったし、公開から30年近くの時が経った今、
若山富三郎(1992年没)、高倉健も鬼籍に入り(2014年没)、松田優作の病状を当時唯一
知っていたといわれる安岡力也(2012年没)、そして若山富三郎の子分役として出演
していた吉本新喜劇の島木譲二も今年亡くなった。

30年近く経った今でも彼らはあのときのまま変わらずフィルムの中で、当時のまま永遠に
生き続けている。


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